国際ジャーナリスト 柴田 瓔子の海外特派員レポート
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■第269回 ハイパーローカル・メディアはビジネスとして成立しない 2012年06月22日

 ハイパーローカル(超ローカル)は2-3年前米国のメディア業界ではバズワード(Buzzword:専門家が使う様な流行語)であった。「ハイパーローカル・メディア」や「ハイパーローカル・ジャーナリズム」は米国の地方紙が次々と廃刊になり、新聞の不在を何千人と云う個人ブロガーが地域に特化したニュースを提供したことで次世代を担うメディアと騒がれた。ブロガーが提供する市議会での議事録、土地の高校生のバスケットボールの試合に結果、土地の警察の事件簿控え等のニュースは"Hyperlocal (地域密着型)ジャーナリズムとして米国では4100ものウエブサイトが生まれた。米国の大学の新聞学科にはハイパーローカル・ジャーナリズム学部が新設された。ハイパーローカル・Websitesには 1)ローカル・コミュニティ活動型 2)ビジネス追求型がある。 ローカル・コミュニティ活動型は 大抵1-2人で運営される、いわゆる、mom and pop(夫婦等家族)経営で、サイト上への広告収入は殆ど見込めず、ボランティア運営で、現在半分以上が休眠状態であるという。

 ビジネス追求型では、2009 年年12月AOL(世界最大のポータルサイト運営社)のTim Armstrong CEO が "Patch Media" (米国24州で870もの地域限定ニュースサイトを運営)を5千万ドル(40億円)で買いとり、本格的に乗り出した。その他大手のIT企業が次々とハイパーローカル.メディアに進出した。しかし、AOLは重大な見込み違いをした。ハイパーローカル・メディアのビジネス・モデルが確立していなかったのである。AOLの様なビジネス追求型の運営者はサイト上の広告収入に依存する。しかし、メディアが資金源と頼みとするネット上でのバナー広告がハイパーローカル・メディアでは皆無であった。 昨年AOLの重役はレストランや、スパ、その他地元コミュニティの企業に広告の80%を売る事が出来ると語った。しかし、地元コミュニティの広告はピザ屋,宅配会社、クリーニング店、自動車修理、ノミやダニの駆除と非常に小口であり。地元からの広告収入はPatchの広告収入全体の18%しかにならなかった。ローカルの広告主はコスト意識が高く、すぐに広告効果出るオンライン広告を望む。例えば、Google 検索広告の様に、広告をクリックしたら、それが即売り上げに繋がる事が分る様な広告が好まれる。バナー広告は消費者との間に感情的なつながりを築き上げる事に役立つと云うが、全国規模の広告主はハイパーローカル・ウエブサイトは一般消費社とコミュニケーションをとるには効率的な方法でないと考えている。AOLの全国規模の広告主はアメリカン・エクスプレス、バンカアメリカ,ウォルーンは,AOLへのご祝儀で広告を買っていたたが、今年は広告契約を更新しないと云う。この分野に進出した利益追求型の運営社の中にはハイパーローカル・メディア分野ではビジネス・モデルが描けないと早々と断念し、投資資本を引揚げる企業が表れた。Allbritton Communications( Politico: 政治専門のメディア)は TBD(ワシントン市の野心的なハイパーローカル・サイト)への投資資本を引揚げた。ワシントン・ポスト紙やニュ-ヨーク・タイムス紙もオンライン.ニュース配給会社への投資を引揚げている。この分野で先駆者であった英国のガーディアン・メディア・グループもハイパーローカル・プロジェクトは持続不可能だと米国での研究を切り上げた。

 今年5月末AOLの株主グループStarboard Value(AOLの5.3%株所有)はArmstrong CEOが投資したハイパーローカル.メディアのPatchは成長性が見込めるビジネスとは到底思えないと厳しく批判するレポートを発表した。Starboard Valueによると、Patchは1千3百万(10.4億円 1ドル80円)の広告を取るのに、1億4千7百万ドル(117億6千万円)の損失を計上していると非難した。

 メディアの専門家は ハイパーローカル・ビジネスは広告セールス部隊に莫大な資金がかかり、一方顧客の方はサイト上に広告を出す予算も持たない地元の零細ビジネスと云うギャップがPatchの莫大な損失に繋がっていると云う。サイト上では 専門家がAOLは何時まで失敗したビジネス・モデルにしがみついているのかと批判している。
  日本でも地域活動型のハイパーローカル・ニュース・サイトが無数にある。特にハイパーローカル多摩メディアが活発である。



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